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名古屋地方裁判所 昭和51年(ワ)272号 判決

原告 朝倉勝一

被告(第二七二号事件) 株式会社日立製作所

被告(第六四六号事件) 日立熱器具株式会社 外一名

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告に対し、各自金二、〇〇〇万円及びこれに対する昭和五一年二月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は、被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁(被告ら)

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、次の意匠権(以下、本件意匠権といい、その登録意匠を本件登録意匠または、本件意匠という。)の意匠権者である。

意匠に係る物品 保温着

出願日     昭和四〇年六月二六日

登録日     昭和四二年三月一八日

登録番号    第二六八九二五号

登録意匠    別紙意匠公報に示すとおりの保温着の形状

2  被告らによる本件意匠の使用

(一) 原告は、ミシン加工・縫製業を営むものであるところ、創意工夫をこらし、苦心の末、主として学童、学生の冬期勉強用に役立てようと、本件意匠に係る保温着を考案、創作し、製造したものである。

(二) ところが、昭和四三年一〇月になつて、原告は近くの家電製品販売店において本件登録意匠に係る保温着が日立製品として店頭に陳列されているのを発見した。右日立の勉強用足温器(以下、被告製品という。)は被告日立熱器具株式会社(以下、被告日立熱器具という。)が製造し、被告日立家電販売株式会社(以下、被告日立家電という。)が販売しており、一方、被告日立製作所は、右両被告を含む「日立グループ」のいわば首脳部ないし総指令部たる位置を占める会社であつて、被告日立熱器具及び同日立家電両社に指示して、本件意匠権を侵害して被告製品を製造販売させたものである。

(三) 原告が本件意匠権を侵害されたと主張する対象物件は、被告製品として昭和四三年から昭和五二年までの間製造販売された次の製品である。

(1) 被告製品のうち、型式記号SC―三一〇、三一一、三一二のもの。これらは同一意匠であるから、まとめて被告製品(1)とする。なお、型式記号SC―三一〇の製品が検甲第二号証である。

(2) 被告製品のうち、型式記号SC―三一三のもの。これを被告製品(2)とする。なお、検乙第一号証がこの製品である。

(3) 被告製品のうち、型式記号SC―三一四、三一五のもの。これらは同一意匠であるからまとめて被告製品(3)とする。

なお、型式記号SC―三一四の製品が検甲第三号証である。

(四) 原告は、昭和四四年二月一三日、被告製品(1)につき、出願番号昭四四―〇〇四二〇四号をもつて、類似意匠の意匠登録出願をしたところ、昭和五一年一一月二五日右出願の類似意匠は登録された(以下、これを本件類似意匠という。)。

3  意匠の対比方法について

(一) 本件登録意匠の範囲は、意匠法(以下、単に法という。)二四条、六条により、「願書の記載」と、「図面に代えて願書に添付した写真」(以下、図面代用写真という。)によつて現わされた意匠に基づいて定められるのであり、これが類否判断の基礎資料である。そして、願書に添付すべき右図面代用写真は法六条、意匠法施行規則(以下、単に規則という。)三条、同規則様式第六、同第五により、正投象図法により各図同一縮尺で作成した正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図(以下、これらの図をまとめて六面図ともいう。)をもつて一組とし、一組の図面は一枚の用紙に記載しなければならない(但し、左側面図と右側面図が同一または対称の場合は、一方の側面図を省略できる。)旨が規定されているが、本件登録意匠の図面代用写真も、正投象図法によつて作成されたものであり、このこと(但し、右側面図は左側面図と対称に現われるため省略してある。)は、本件意匠が特許庁の審査を経て登録され、その意匠公報にも願書に添付された図面代用写真を公示していることから明らかなことである。

(二) しかしながら、意匠なるものは、物品に化体されたものであり、物品を離れてはそもそも意匠なるものは存在の余地がないものであるから、物品の図面、写真は意匠そのものでなく、いわば意匠のひとつの影なのである。つまり、右(一)により範囲が定められた本件登録意匠は、その実施品(検甲第一号証)に化体されて存在するのであり、写真に化体して存在するものではなく、一方本件の対象物件の意匠は、被告ら製造販売の前記検甲第二号証(被告製品(1))、同第三号証(同製品(3))、検乙第一号証(同製品(2))に化体された意匠である。

それ故、本件登録意匠の範囲は、具体的な実在たる意匠に係る物品に即しつつ、願書の記載と前記図面代用写真とに基づき決定されるべきものなのである。

もともと、保温着は、こけしなどの固形物体と異なり、一寸とした物品の置き方の違いによつて同一製品・同一意匠でも異なつたものに映ずるのであり、類似判断をするに当つては、何よりも直載に物それ自体(検証物)を直接視覚に捕え、意匠の要部を直観すべきである。また、意匠の類似判断は、正投象図法による正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、底面図にそれぞれ分解し、部分部分に分析して観察判断するものではない。

(三) また、正投象図法による場合において、こけし人形のような固型的な物品の場合と本件のような変形自在な衣料品の如き物品の場合とでは、具体的適用において大きな差異が生じ、前者は正投象図法による場合、撮影の方法とその結果は単一的であるが、後者は正投象図法による場合でも撮影の方法は複数的、選択的であり、かつ撮影の結果は多様である。従つて、本件訴訟の類否判断の対象たる意匠を現わす物品(検甲第二、第三号証、検乙第一号証)は、右判断の基礎となる本件登録意匠を現わす意匠公報(甲第二号証)の所掲願書添付の各図面(図面代用写真)と同一撮影方法をもつてする写真によるべきである。これによる対比は後記6のとおりである。

(四) 更に、類否の判断対象とすべき物品については、争いがある以上、現物をもつてその意匠を認定すべきものである。そして、類否判断に当つては、その現物をもつて、登録意匠の各図面代用写真のそれぞれに正確に対応する方法で、登録意匠の現物と比較対照すべきである。即ち、図面代用写真各葉をもとにして、これに相応して、登録意匠の現物と対象物品の現物とを対比して意匠の彼我類似性を認定すべきものなのである。

4  本件登録意匠の構成は次のとおりである。

(一) まず、本件意匠に係る物品は「保温着」であるが、この保温着は足元底部に電熱板を容れ、一側部下辺にコード口孔を付設して外部からコードを通し(電気足温器)、その暖房効果を主として下半身に行き渡らせ、保温するため、下半身全体をおおつて着用するキルテイング製品である。

(二) 次に、本件意匠は、底面をほぼ正方形、上面穿口部も絞つた形でほぼ正方形とし、これを側面から見ると、後半が前半よりやや高く形成された形で、主体部周側面が腰から膝にかけて外方に膨れた形をした袋状に形成し、その正面中央において、上縁から高さの半ばよりやや下方にかけてチヤツクを設け、その上方部の左右に、口縁が両側方に下向傾斜したポケツト口を記し、一側方の下辺にコード口孔を設けた形態からなり、かつ表面に中間調子、内側に明調子の布を使用したキルテイング製で全面に菱形網状のステツチを施した態様からなるものである。

5  本件登録意匠の支配的主要部

(一) 本件で問題となつている意匠に係る物品は、保温着であるが、これはこけしの模様、着物の模様などのように既にこの世に存在する物品についての意匠ではなく、物品自体が原告によつて全国で最初に、創作の上現実に製造、実用化したものであり、以前にはこの世に存在しなかつたものである。

なお、本件登録意匠の出願前になされた別紙実用新案公報(実用新案出願公告昭三八―一三一三一号)に示された考案の対象である椅子掛用脚部保温袋の図面記載の形態に係る物品は実際にはこれを実施して製造された事実はなく、現実にはこの世に存在しなかつたものである。

(二) 右を前提として、本件登録意匠の基本的構成形態・支配的主要部を考えるならば、それは、底面部に電気足温器を包み込むように内蔵し、その一端にコード孔を設け、更に着脱容易にするためフアスナーを付け、着用して椅子に腰掛けた場合、キルテイング加工の用布をもつて下半身全体をその姿勢に沿つてすつぽり緩やかに包み込む形状外観である。

6  本件登録意匠と被告製品の対比

そこで、先づ、被告製品を本件登録意匠と同一方法により写真撮影をすると甲第二九号証の三、四、五段目の写真のようになる。これに基づいて、本件登録意匠と被告製品に現われる意匠的部分(以下、被告製品の意匠という。)とを対比すると、次のとおりである。

本件登録意匠と、被告製品(1)、(2)、(3)の各意匠に係る物品は、いずれも下半身・両肢を入れる長方形袋状物の下部に暖房器具・電熱板を設けたキルテイング加工の布製の保温着であるが、本件登録意匠と被告製品(1)、(2)、(3)の各意匠とは、ともに(1)その主体部周側面の正面(背面も同じ)が穿口部から底面部へかけて、外方に向つて緩やかな膨らみがあり、その全体の輪郭が上下に両端の尖鋭部分を切除した紡錘形状をなし、(2)全体的には内部に保温着専用の電熱板を設置し、その暖房効果が外部に漏れないで腰から足先まで下半身全部を保温する基本的構成形態をなし、(3)綿の入つた暖かい用布(キルテイング加工)の袋状のものに、穿口部から下方に向つて着脱用のフアスナーが取付けられておる点に基本的一致点があるところ、この部分は最も看者の注目をひき類似感を誘発する意匠の支配的主要部である。既にこの点において被告製品(1)、(2)、(3)の各意匠は本件登録意匠に類似していることは明らかである。

本件では右意匠の支配的主要部ばかりでなく、既に甲第二九号証の図面対比などによつて明らかなとおり支配的主要部以外の正面図、背面図、側面図、平面図、底面図のいずれの面においても、同一物と断じてよい程に差異はなく、被告製品(3)の意匠の背当て部分など若干の差異は、全体的観察においては部分的小差にすぎないところである。

右のように、被告製品の各意匠はいずれも本件登録意匠に類似するものである。

7  損害

(一) 被告らは、共同して大企業の威力をもつて原告の苦情、抗議を無視して故意に昭和四三年以降今日まで本件登録意匠に類似した意匠に係る被告製品を電気足温器ないし勉強用足温器として大量に宣伝、製造、販売して原告の本件意匠権を侵害した。

その小売価格は一着当り昭和四三年から昭和四七年まで三九八〇円、昭和四八年四三〇〇円、昭和四九年、昭和五〇年は六三〇〇円であり、被告の純利益は一着当り金二〇〇〇円を下廻ることはない。また販売数は一年間に五万着を切ることはない。従つて、被告らの右昭和四三年から同五〇年までの期間に挙げた純利益は金八億円を下ることはないから、原告に対して右同額の損害を与えたものである。

(二) 仮に、右数量の販売が認められないとしても、昭和四三年から昭和四七年までの間の被告らの製造販売した数量は別紙生産実績表のとおりである。販売価格(小売価格)は右(一)のとおりとして、その利益が五〇パーセントとしても、金二、〇〇〇万円をはるかに越えることは明らかである。

8  よつて、原告は、被告らに対し、共同不法行為による損害賠償として、各自右損害金の一部金二、〇〇〇万円及びこれに対する被告日立製作所に訴状が送達された日の翌日である昭和五一年二月二〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する被告らの答弁

1  請求原因1の事実は認める。

2(一)  同2(一)の事実のうち、原告がその主張の営業をしていることは認め、その余は知らない。

(二)  同2(二)の事実のうち、被告製品を製造するものが被告日立熱器具であることを認めるが、被告日立家電がこれを販売し、被告日立製作所が被告日立熱器具、同日立家電に指示して本件意匠権を侵害し、被告製品を製造販売させたとの事実は否認する。

被告日立熱器具は、昭和四〇年一〇月より既に他の電気機器製造販売業者が、保温着に電熱板を組み込んで一体とした電気製品を広く市販しており、また保温着の意匠として既に実用新案出願公告昭三八―一三一三一号(乙第三号証)の意匠のようなものが知られていたので、それら公知の製品ないし意匠を参考として検討を加えたうえ、自己の製品の意匠を決定して製造販売を開始したものである。

(三)  同2(三)の事実のうち、被告製品が本件意匠権を侵害しているとの主張は争い、その余は認める。

(四)  同2(四)の事実のうち、原告が、その主張の年月日に、その主張の出願番号の類似意匠の登録出願をしたこと、その出願の類似意匠が原告主張の年月日に登録されたことは認める。

しかしながら、原告主張の類似意匠の登録の事実は、何ら本件における原告の主張の裏付けとなるものではない。その理由は次のとおりである。

(1) もし、原告主張の如く、その登録出願に係る類似意匠が、被告製品(1)自体を写真に撮影したものであるとすれば、その類似意匠は、原告が創作したものではない。意匠登録出願は、たとえ類似意匠の登録出願であつても、意匠の創作をした者か、又はその者から意匠登録を受ける権利を承継した者でなければこれをなしえないのであつて、それ以外の者が登録出願をしたときは、たとえ一たん登録がなされても審判手続により無効とされることを免れないのである(法四八条一項三号)。

即ち、意匠法による類似意匠の登録の制度は、意匠権者が他人の製品を自己の登録意匠に類似するものとみて、その類似性につき特許庁の有権的判断を求めるためにこれを利用することは許されないのである。そのような判断は、司法作用として専ら裁判所の管掌するところである。

(2) 原告は、前記類似意匠の登録出願に当り、その出願に係る物品の形状を故意にゆがめて、本件登録意匠に類似するが如くに見せかけて審査官を欺き、違法に類似意匠の登録を受けたものである。

即ち、右類似意匠の登録出願の願書(乙第二号証)に添付された図面代用写真(図面に代えて意匠を現わした写真―法六条二項)中、右側面図及び背面図の各写真をみると、物品のほぼ中央部左右二箇所を鋲で止めてあるのが歴然と看取できる。即ち、原告は、物品の意匠を故意に変形して写真を撮影し、それをもつて類似意匠を現わすものとしたのである。

本件登録意匠をみると、その形状は、正面図、背面図及び左側面図(右側面図は左側面図と対称にあらわれるとの説明が付されている。)とも、「穿口部から底面部へかけて、外方に向つてゆるやかな膨らみがあり、その全体の輪廓が上下に両端の尖鋭部分を切除した紡錘形状をなしている」(甲第六号証の東京高裁昭和五〇年一〇月二九日判決六丁裏五行ないし八行参照)。原告は、前記類似意匠の登録出願に当り、その出願に係る物品の意匠を、本件登録意匠の右形状に類似させようとして、その願書添付の図面代用写真中、右側面図及び背面図の各写真につき、前記の如き作為を施したものにほかならないのである。

ことに、右類似意匠登録の願書(乙第二号証)における「意匠の説明」の欄には、「形状について」として、「本(件登録)意匠の正面図・背面図はゴムを伸して写したので巾広くなつて居るのに対し類似意匠の正面図背面図はゴムを収縮したまま写したので巾せまくなつて居る」との記載がある。右の説明が穿口部に関するものであることは明白である。従つて、本件登録意匠は、穿口部のゴムを伸して写しても、なお中央部が外方へ向つて緩やかな膨らみをもつ紡錘形状をなすような意匠である。しかるに、原告は、類似意匠を現わした写真の撮影に当り、故意に穿口部のゴムを収縮し、かつ中央部を左右に鋲で伸展して、あたかも当該物品が、本件登録意匠の有する前記紡錘形状を具備するが如くに作出し、もつて不法に類似意匠の登録を受けたわけである。

されば、原告主張の類似意匠登録出願に係る物品が、いずこの会社の製品であろうとも、当該物品について類似意匠の登録がなされたことをもつて、その物品の意匠が本件登録意匠に類似するものとする何らの根拠とならないことは明白である。

3(一)  同3(一)の事実は認める。但し、本件登録意匠の図面代用写真については、それが、正投象図法以外の特別の図法によつたか否かにかかわりなく、意匠登録後においては、それが正投象図法に従つて作成されているものとして、意匠の範囲が決定されるとの意味で認める。

(二)  同3(二)(三)(四)の主張は争う。

法二四条は、登録意匠の範囲を、

(1) 願書の記載及び

(2)(ア) 願書に添付した図面に記載された意匠又は

(イ)〈1〉 願書に添付した写真により現わされた意匠もしくは

〈2〉 願書に添付したひな形により現わされた意匠もしくは

〈3〉 願書に添付した見本により現わされた意匠

に基づいて定めるものとしている。

本件登録意匠の如く、意匠を図面代用写真をもつて表わした場合には、それに基づいて意匠の範囲が認定されるのであつて、それ以外の現物をもつて意匠の範囲を認定する余地はない。

本件登録意匠については、本件意匠登録出願の願書に添付された写真(乙第一号証の一、三)は、正面図、背面図、左側面図(右側面図は左側面図と対称に現われるので省略)、平面図及び底面図から成るものであつて、保温着を立体的に表現したものであるから、これらの図面代用写真は、正投象図法に従つて作成されたものと解しなければならない。

しかして、正投象図法に従つてこれをみるとき、本件登録意匠の表わす物品たる保温着は、穿口部を平面図、底面部を底面図の如き状態としたまま、これを立体的に正面、背面及び左側面より撮影したとき、それぞれ正面図、背面図及び左側面図の如き形状を示すものであることが理解されるのである。

換言すれば、本件登録意匠の正面図及び背面図が、保温着を前後に扁平にしたときの形状を示すものであるとみたり、またその左側面図が、保温着を左右に(正面からみて)扁平にしたときの形状を示すものであるとみたりすることは許されないのである。

次に、本件訴訟の対象たる物品について、その意匠を現わす写真を作成する目的は、いうまでもなく、それを本件登録意匠との対比のための手段とするところにある。そして、本件登録意匠の願書に添付された写真を正投象図法に従つて作成されたものと解すべきである以上、これとの対比の用に供されるべき本件訴訟の対象たる物品の意匠の写真もまた、正投象図法に従つて作成されるべきは当然である。けだし、そうしなければ対比そのものが不可能となるからである。

また、本件訴訟の対象たる物品については、必ずしも図面または写真を作成することなく(ないしは作成された図面または写真にこだわることなく)現物をもつて直接その意匠を認定することもさしつかえない。

しかしながら、登録意匠が正投象図法によつて作成された図面又は写真をもつて示されている場合には、対象物品の現物によりその意匠を認定し、登録意匠との比較を行う場合にも、現物を正投象図法にならつて正面、背面、左右側面、平面、底面の六方向から観察し、その結果に基づいて登録意匠との類比を決する必要があることはいうまでもないところである。

4  同4の各事実は争う。

5(一)  同5の事実は否認する。但し、原告主張の実用新案公報が存在することは認める。

(二)  本件登録意匠の認定とその特徴

原告は、本件登録意匠を請求原因4(二)のとおり特定しているが、この特定は、本件意匠登録を無効とした昭和四七年九月二一日の審決における本件登録意匠の認定と実質的に同文である。

しかしながら、右のような意匠の特定のもとにおいては、本件登録意匠は、その意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物である実公昭三八―一三一三一号実用新案公報に記載された意匠に類似する意匠となり、右審決が認定するとおり、法三条一項三号の規定に違反して登録されたものとなつて、無効を免れないのである。

右の審決は、後に前記東京高裁判決(甲第六号証)によつて取消されることになるが、右判決においては、次の二点において審決のした意匠の特定が修正されている。

(1) 右の審決で「これを側面からみると、後半が前半よりやや高く形成された形で」とされていた部分は、判決によれば、「穿口部の側面は、本件意匠においては人体の後部に当る部位が同前部に当る部位より相当高い形状につくられる」とされ、引用意匠(乙第三号証)においては、その部位に「さような段差はなくほぼ水平につくられている」点に差異があることが認定されている。

(2) 前記審決で「主体部周側面が腰から膝にかけて外方に膨れた形をなす袋状に形成し」とされていた部分は、右判決によれば、「主体部周側面の正面(背面も同様)は本件意匠においては穿口部から底面部へかけて、外方に向つてゆるやかな膨らみがあり、その全体の輪廓が上下に両端の尖鋭部分を切除した紡錘形状をなしている」とされ、引用意匠(乙第三号証)においては、上半の腰部に当る部位にこそ外方への膨らみがあるが、その部位の下端から底面部にかけてはほぼ垂直である点で両者間に差異があることが認定されている。

前記判決は、右の二点において、審決がした本件登録意匠の認定を修正したことにより、本件登録意匠と引用意匠との間に差異を認め、看者の受ける美感を異にするものがあるとの理由で全体的に観察して両者は非類似であるとしたのである。

6  同6の主張は争う。

原告提出の甲第二九号証、第三、第四、第五段目の写真は、その各対象物品につき、その穿口部を平面図、その底面部を底面図の如き状態としたまま、立体的にその正面、背面及び側面を各正面図、背面図及び側面部として作成したものではない。それらの正面図、背面図及び側面図の撮影に当つては、いずれも各対象物品が扁平の状態にされたものであることが歴然としている。かくては、右の各写真が正投象図法に従つて作成されたものということはできないから、かかる写真に基づいて、これらの対象物品の意匠を本件登録意匠と比較することは不可能である。

7  同7の各事実は否認する。

三  被告らの積極主張

1  前記東京高裁判決によると、本件登録意匠は、次の二点、即ち

(一) 人体の後部に当る部位が、同前部に当る部位より相当高い段差のある形状につくられていること(以下、これを本件登録意匠の特徴(1)という。)

(二) 主体部周側面の正面及び背面が穿口部から底面部へかけて、外方に向かつて緩やかな膨らみを有し、その全体の輪廓が上下に両端の尖鋭部分を切除した紡錘形状をなしていること(以下、これを本件登録意匠の特徴(2)という。)

に特徴を有するものとして無効を免れ、登録意匠としての存続を認められたものである。

されば、原告が本件登録意匠に基づいて意匠権を主張するに当つては、右の二点の特徴を無視することは許されず、もし対象意匠が右二点の特徴の一つでも具備しないときは、これを本件登録意匠に類似するものと主張することは許されないものといわなければならない。

2  これに対し被告製品の意匠は次のとおりである。

(一) 被告製品(1)の意匠 別紙第一目録記載のとおり

(二) 同(2)の意匠    別紙第二目録記載のとおり

(三) 同(3)の意匠    別紙第三目録記載のとおり

3  そこで、本件登録意匠と被告製品の右意匠を対比すると、次のとおりである。

(一) 被告製品(1)の意匠との対比

被告製品(1)の意匠の正面、背面の形状は、〈1〉全体の輪廓が、こけし人形の首部を除いたものを思わせる形状であり、〈2〉両側線が腰部から上端にかけて内方へやや急激にカーブし、また膝下部において僅かに凹部を形成する点を除いて、ほぼ垂直な直線である。また、左右側面の形状のうち、穿口部によつて形成される上縁は、何らの段部もないほぼ水平な一線である。とすれば、右意匠は本件登録意匠の特徴(1)(2)を有しないことになる。従つて、被告製品(1)の意匠が本件登録意匠に類似しないことは明白である。

(二) 被告製品(2)の意匠との対比

被告製品(2)の意匠の正面、背面の形状は、〈1〉全体の輪廓が、頭陀袋を細長くしたような形状であり、〈2〉両側線が、上端及び下端に近い部分において僅かに曲線を示す他はほぼ垂直な直線であつて、背面膝下部において、ゴム紐によるしぼりがかけられ、その上下にわたつて大きいたてひだが形成される。また、左右側面の形状のうち、穿口部によつて形成される上縁は、何らの段部もないほぼ水平な一線である。

更に、被告製品(2)の意匠の場合、背面膝下部において、ゴム紐による絞りがかけられていることにより、その背面の形状及び左右両側面の形状が、本件登録意匠のそれと大きく異なつている。この点は看者の注意を最も強くひくところであるから、これを原告主張のように「部分的小差」とすることは到底許されない。このように、被告製品(2)の意匠は、本件登録意匠の特徴(1)(2)を有しないというべく、本件登録意匠に類似しないことは明らかである。

(三) 被告製品(3)の意匠との対比

被告製品(3)の意匠の正面、背面の形状は、〈1〉全体の輪廓が徳利ないしビール瓶を思わせる形状であり、〈2〉両側線が、腰部から背あてにかけての部分及び下端に近い部分で僅かに曲線を示す他はほぼ垂直な直線であつて、背あて部分は富士山状の形状を有し、その上縁の両端から前面上縁にかけて垂直に二本のサスペンダーが取付けられている。〈3〉背面膝下部においてゴム紐によるしぼりがかけられ、その上下にわたつて大きいたてひだが形成される。また、左右側面の形状のうち、穿口部と背あて部とによつて形成される側面上縁は、ローマ字のJの横棒を後にずらしたような形状である。このように、右製品の意匠は背面絞りと背当ての存在によつて、本件登録意匠とは、完全に全体の形状を異にしており、細部の類否を論ずるまでもなく、これを類似意匠とする余地のないことが明白である。

四  被告らの積極主張に対する原告の反論

1  原告が、本件意匠権を侵害していると主張している被告製品が別紙第一、第二、第三目録のものに相当する製品であることは認める。但し、その写真撮影の仕方は「正投象図法」の名のもとに、本件意匠との類似性を避けようとしてこらした専的技法の混入した疑がある。また、本件登録意匠の特徴(1)(2)のみが、本件登録意匠の支配的主要部であるとの主張は争う。

2(一)  被告製品(1)の意匠との対比

先づ被告らは意匠に係る物品をキルテイング製電気足温器と命名しているが、物品自体は本件意匠に係るものと全く同一であり、これについてはあえて論ずる必要をみない。被告製品(1)の意匠は次のとおりである。

(1) 底面の形状はほぼ正方形であり、一側部下辺にコード口孔を設けて電気足温器を底部に内蔵するものであり本件登録意匠と同一である。

(2) 上面穿口部の形状は、底面に比してやや強く紋つた円味を帯びたものであり、この点はほぼ正方形状の本件登録意匠と異なるが、いずれも穿口部にゴム紐を通してあるものであつて、これを着用した時保温着が下にずり落ちないようにしたものであり、かつ、本件登録意匠の場合も着用したときにはほぼ丸くなるものであつて、この差異は保温着の用途、機能からくる必然的形状(物品の要部)における部分的小差に過ぎない。

(3) 正面及び背面の形状は、腰部から上端にかけてややカーブの線が強いこと、腰部から下端にかけてやや直線形状である点において差異が存するが、前者は穿口部を絞つたことに伴うものであり、また全体として両肢をすつぽり包みこむ膨らみを持つた長方形状の基本的形態においては一致し、その差異は看者をして格別異なつた美感を与え、注意をひくものではない。むしろポケツトの位置、形状はほぼ同一である。

(4) 左右側面の形状は穿口部がほぼ水平状である点で差異があるが、全体的に観察すれば見る者をして、その物品に固有な形態を気付かせない程の新しい意匠的工夫、創作の展開があるなどと到底いえないものであり、美的特徴の顕著性はない。かえつてチヤツクの位置こそ違え、上縁からほぼ同様のチヤツクが設けられており、また両側線は上端から下端にかけてやや膨らみをもつ形状をなす点で本件登録意匠とほぼ同一である。

(5) 被告らは着用した場合の前方斜視図をことさら写してみせるが、本件登録意匠と変りばえがしないばかりか、保温着はその用途、機能上椅子に腰掛けた正面・側面(斜め)をやや見下ろす視点から見た外観が最も視覚に訴えるものであつて、この点からすると、前記の如き差異はいずれもごくありふれたもので特徴がないため、到底看者に異なつた印象を与えるものでなく、意匠はほぼ同一であり、一般需要家が彼我混同するおそれ極めて大である。よつて類似性を免れない。

(二)  被告製品(2)の意匠との対比

右製品の意匠と本件登録意匠との差異は、穿口部の形状が後半部分を強く絞つた形の小さな半月形状である点、背面膝下部にゴム紐による絞りがかけられている点であるが、その余の点はほぼ前記と同様であり、右の如き差異は部分的小差であつて、物品の要部の一致点を超えた新しい意匠的工夫、創作の展開はみられない。

(三)  被告製品(3)の意匠との対比

右製品の差異は、右の背面絞りの点と背当て部分だけであり、その余はほぼ同一である。しかし背当ては全体として美感に影響のない単に使用上の効果、機能を目的としているに過ぎない部分であり、特別顕著性を有するものではない。物品の要部ではあつても、意匠の要部ではないというべきである。その余はほぼ前同様であり、意匠はほぼ同一であつて、その類似性は到底免れない。

(四)  被告らは、あれこれと細部にわたつて非類似を主張するが、請求原因5の事実を踏まえて対比検討すれば、基本的構成形態は一致し、被告ら摘示の非類似の主張部分はいずれも原告の本件登録意匠に係る保温着、従つて本件登録意匠を現実に見、知つた以上は、素人でも容易に思い付く程の模倣であり、部分的少差の域を出ないものであることは明らかである。

第三証拠関係〈省略〉

理由

一  請求原因1の事実並びに被告日立熱器具が被告製品を製造していることは当事者間に争いがない。

二  意匠の対比方法について

1(一)  原告は、意匠の類否の判断は、本件登録意匠の現物と、対象物品の現物とを対比して、意匠の彼我類似性を認定すべきであり、また、類似判断をするに当たつては、何よりも直載に物それ自体を直接視覚に捕え、意匠の要部を直観すべきである旨主張するので、先づ、この点について検討する。

(二)  法二四条によれば、「登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添付した図面に記載され又は願書に添付した写真、ひな形若しくは見本により現われた意匠に基いて定めなければならない」とされているところ、本件登録意匠の出願が法六条二項の「図面に代えて、意匠登録を受けようとする意匠を現わした写真」(図面代用写真)を願書に添付してなされたものであることは当事者間に争いがない。従つて、本件登録意匠は、願書の記載、具体的には願書中の「意匠に係る物品」、「意匠に係る物品の説明」、「意匠の説明」の項に記載されている事項と図面代用写真に基づいて意匠の範囲を決定すべきであつて、それ以外の現物をもつて意匠の範囲を認定することはできないと解すべきである。

(三)  原告は、意匠が物品に化体されたものであり、物品を離れては意匠は存在しないことを強調して前記(一)のとおり主張する。なるほど、意匠とは「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて視覚を通じて美感を起させるもの」(法二条一項)であるから、意匠は、物品と不可分の関係にあり、これを離れては考えられない。しかし、これは単なるモチーフだけでは意匠権の対象とならず「物品」に化体して初めて意匠法上の意匠となりうることを述べているのであつて、この「物品」とは、原告主張の如く、実施品を意味するものではない。従つて、右のことにより、直ちに意匠の範囲は現物(実施品)に即して定めるべきであるとまではいえないのである。けだし、意匠出願の図面代用写真に記載された意匠と、権利者の実施品の意匠とが必ずしも同一でない場合が往々にしてあり、そのような場合、右実施品と対象物品とを対比することは意匠の対比方法として相当でないことは明らかだからである。それ故、あくまでも法二四条のとおり登録意匠の願書の記載等からその権利範囲を定めたうえ、それとの対比をなすべきである。原告の主張は独自の見解に基づくものであり、採用できない。

2(一)  ところで、規則三条、同様式第六、第五によれば、立体を表わす図面(本件の場合は図面代用写真)は、正投象図法により各図同一縮尺で作成した正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図をもつて一組とし、一組の図面は一枚の用紙に記載しなければならないこと、本件登録意匠の図面代用写真が正投象図法によつて作成されたもの(但し、右側面図は左側面図と対称に現われるため、省略してある。)として扱われるべきことは当事者間に争いがない。ところで、正投象図法とは、一見した程度ではその形態が不明であるが、作図された図形を頭の中で構成してはじめて、立体を知覚することができる構成的表現図法であり、それによる図面は、互いに直角に交わる六つの面に囲まれた空間の中に物品を置いて、六つの面にそれぞれ垂直な方向から見える通りの図を外開きにしたものである。そして、衣服などの布製品は、その形態が販売時、使用前、使用中と極めて多様に変化するものが多く、このような物品の場合、原則的には動的意匠といえるが、あらゆる変化態様を作図せずとも、意匠が明確に表現できる一つの状態の「必要性」だけを作図すればよく、その他の状態は、物品の性質からみて十分に理解することができるものと解される。

(二)  とすれば、布製品のように形態が多様に変化するものについても、正投象図法に従つて作図がなされるべく、その場合、意匠が明確に表現できる一つの状態について作図すれば足りるが、それについては六つの面に囲まれた空間の中に、物品を置いてそのまま、同一状態、同一縮尺で六面図を作図ないし撮影しなければならず(そうでなければ、六面図によつて立体を再構成することは不可能である。)、各図面ごとに縮尺を変えたり、状態を変更したりして作図ないし撮影することは許されないと考えられる。

その反面として、前記図面代用写真によつて、本件登録意匠の範囲を認定する場合も、各写真が同一状態の物品を正投象図法で撮影したものとして判断しなければならないというべきである。

3(一)  次に、対比の対象とする被告製品は、その現物そのものであるが、本件登録意匠公報は図面代用写真によつているし、右各製品は布製品であるから、その対比を容易にするため、本件登録意匠の図面代用写真の正面図とされているところに対応する対象物品の面をその正面図とし、その穿口部、底面部は、本件登録意匠の図面代用写真の平面図、底面図に対応する状態とし、その状態で、各六面を前記のような正投象図法で撮影した写真によつて対比するのが簡明であり、本件もこれによるものとする。

(二)  ところで、検甲第二号証が被告製品(1)であること、検乙第一号証が被告製品(2)であること、検甲第三号証が被告製品(3)であることは当事者間に争いがないところ、検甲第二、第三号証、検乙第一号証、成立に争いのない甲第二号証、本件登録意匠の願書に添付された図面代用写真であることに争いのない甲第一七号証、いずれも被告製品を撮影した写真であることに争いのない乙第一二号証の一(被告製品(1)の写真)、第一三号証の一(同製品(2)の写真)、第一四号証の一(同製品(3)の写真)を総合すれば、右乙第一二号証の一、第一三号証の一、第一四号証の一の各六面の写真は、本件登録意匠の図面代用写真の正面図とされているところに対応して、それぞれ各被告製品の正面図を設定し、同製品の穿口部、底面図は、右図面代用写真の平面図、底面図に対応した状態にして、各六面図を正投象図法に従つて撮影したものと認められる。従つて、右乙第一二号証の一、第一三号証の一、第一四号証の一を用いて、被告製品の意匠の構成を認定し、本件登録意匠との対比をすることができるというべく、そこで、以後これらの写真に基づいて検討することとする。

(三)  原告は、対比すべき被告製品を撮影した写真としては、甲第二九号証の写真が正当である旨主張するが、同写真中の被告製品(1)(2)(3)を撮影したとする各写真の正面図、背面図、側面図は、検甲第二、第三号証、検乙第一号証と対比すれば、いずれも各図を撮影するごとに検証物を扁平の状態に置き直して撮影したことが認められ、同一状態のままで撮影された六面図(但し、同写真では一方の側面図が省略されている。)とはいえず、これに基づいて類似の判断をすることはできない。

三  いずれも成立に争いのない甲第六号証、第二七号証の一、二、三、乙第一号証の一、二、三、第三、第一七号証、原本の存在及び成立につき争いのない乙第一九号証の三、前記甲第二、第一七号証を総合すれば、本件登録意匠の構成及び要部は次のとおりであると認められる。

1  両肢を入れるウエスト上部丈の保温着であること。

2  底面の形状がほぼ正方形であること。

3  上面穿口部の形状が、絞りの緩い角に丸みのある正方形であること。

4  正面及び背面の形状が次のとおりであること。

(一)  全体の輪廓が上下に両端の尖鋭部分を切除した紡錘形状であること。

(二)  面側線が、緩やかな膨らみを有する曲線であること。

5  左右側面の形状が、次のとおりであること。

(一)  全体の輪廓が胚芽の欠けた米粒を横から見たような形状であること。

(二)  両側線は、前面の側線、背面の側線とも、なだらかに外方への膨らみを有する曲線であること。

(三)  穿口部によつて形成される上縁は、人体の後部に当る部位が、同前部に当る部位より相当高い段差を有する形状であること。

6  正面布地の中央に膝下に達する深い切り込みを作り、そこにチヤツクが設けられていること。

7  正面上方部の左右に、口縁を外方下向の斜直線状に現わした張付けポケツトを付設してあること。

8  全外周面をキルテイングで現わしていること。

9  両肢を入れるウエスト上部丈の保温着において、前記2、3、6、7、8記載の形状は、いずれもこの種保温着の用途、機能に伴う必然的形状、またはこの種物品においては普通に見受けられる常套的形式であつて、この種保温着に現われるありふれた形状として看者の注意をひく部分でないのに対し、前記4及び5(一)(二)記載の各構成によつて認められるところの、全体形状について、穿口部から底面部にかけて、全周側部の中央部をゆつたりと大きく外方に膨出させ、その全体の輪廓が上下に両端の尖鉛部分を切除した紡錘形状をなしている点並びに前記5(三)記載の構成が、その形状において、特に看者の注意をひく部分(特に、前者の形状)として本件登録意匠の要部を構成していること。

要するに、本件登録意匠では、被告主張の本件登録意匠の特徴(1)(2)が、その支配的主要部を構成するものである。これに対し原告は、本件登録意匠の支配的主要部が、底面部に電気保温器を包み込むように内蔵し、その一端にコード孔を設け、更に着脱容易にするためフアスナーを付け、着用して椅子に腰掛けた場合、キルテイング加工の用布をもつて下半身全体をその姿勢に沿つてすつぽり緩やかに包み込む形状、外観である旨主張する。しかしながら、前記甲第六号証、乙第三、第一七号証によれば、両肢を入れるウエスト上部丈の保温着は、原告によつて初めて創作されたものではなく、本件意匠登録出願前に、日本国内において領布された刊行物である実用新案公報(実用新案出願公告昭三八―一三一三一号)に記載されていること(この実用新案公報が存在することは当事者間に争いがない。)、この公報で示された考案の対象たる椅子掛用脚部保温袋が、引用意匠となり、本件登録意匠の登録について、昭和四七年九月二一日に、無効の審決がなされたこと、この審決は、昭和五〇年一〇月二九日、東京高裁判決によつて取消されたが、それは、前記9記載の二点の要部について意匠的工夫、創作があると認められたためであること、右実用新案においては、底部にこたつも入れることができるように、下部の横にチヤツクを設けていることがそれぞれ認められる。これらの事実によれば、原告が本件登録意匠の支配的主要部と主張している点はいずれもこの種保温着の用途、機能に伴う必然的形状ともいうべきもので、保温着の基本的構成にすぎず、本件登録意匠の要部とはいえないのであり、原告の主張は採用できない。

四  前記乙第一二号証の一によれば、被告製品(1)の意匠の構成は次のとおりであると認められる。

1  両肢を入れるウエスト上部丈の保温着であること。

2  底面の形状が、ほぼ正方形であること。

3  上面穿口部の形状が、強く絞つた形の小さい円形であること。

4  正面及び背面の形状が次のとおりであること。

(一)  全体の輪廓が、こけし人形の首部を除いたものを思わせる形状であること。

(二)  両側線が、腰部(着用したとき人体の腰に当る部分)から上端にかけて内方へやや急激にカーブし、また膝下部(着用したとき人体の膝下に当る部分)において僅かに凹部を形成する点を除いて、ほぼ垂直な直線であること。

5  左右側面の形状が次のとおりであること。

(一)  全体の輪廓が、こけし人形の首部を除いたものをややいびつにした形状であること。

(二)  両側線の一方(前面の側線)が腰部から上端にかけてやや急激にカーブするほかは、ほぼ垂直な直線であるのに対し、他の一方(背面の側線)は、上端から下端へかけて軽く外方への膨らみをもつ曲線であること。

(三)  穿口部によつて形成される上縁は、何らの段部もない、ほぼ水平な一線であること。

6  正面と右側面との間の布地のつなぎ目に添つて、チヤツクが設けられていること。

7  正面上方部の左右に、口縁を僅かに外方下向の斜直線状に現わした張付けポケツトを付設してあること。

8  全外周面をキルテイングで現わしていること。

五  前記乙第一三号証の一によれば、被告製品(2)の意匠の構成は次のとおりであると認められる。

1  両肢を入れるウエスト上部丈の保温着であること。

2  底面の形状がほぼ正方形であること。

3  上面穿口部の形状が、その後半部分を強く絞つた形の小さい半月形であること。

4  上面及び背面の形状が、次のとおりであること。

(一)  全体の輪廓が、頭陀袋を細長くしたような形状であること。

(二)  両側線が、上端及び下端に近い部分において僅かに曲線を示すほかは、ほぼ垂直な直線であること。

(三)  背面膝下部においてゴム紐による絞りがかけられ、その上下にわたつて大きいたてひだが形成されること。

5  左右側面の形状が次のとおりであること。

(一)  全体の輪廓が、ローマ字のBをやや崩した形を思わせる形状であること。

(二)  両側線の一方(前面の側線)が、その上端及び下端に近い部分においてごく僅かに曲線を示すほかは、ほぼ垂直な直線であるのに対し、他の一方(背面の側線)は、上端から下端にかけてなだらかに外方への膨らみを見せつつ、膝下部において緩いハート形の凹部を形成する二段曲線であること。

(三)  穿口部によつて形成される上縁は、何らの段部もないほぼ水平な一線であること。

6  正面と右側面との間の布地のつなぎ目に添つてチヤツクが設けられていること。

7  正面上方の中央部に、中央に仕切りを入れ、口縁をその中央から両側に向つて僅かに外方下向の斜直線状に現わした張付けポケツトを付設してあること。

8  全外周面をキルテイングで現わしていること。

六  前記乙第一四号証の一によれば、被告製品(3)の意匠の構成は次のとおりであると認められる。

1  両肢を入れるウエスト上部丈の主体部に背当ての付いた保温着であること。

2  底面の形状が、ほぼ正方形であること。

3  上面穿口部の形状が、その前半部分を強く絞つた形の小さい半月形であること。

4  正面及び背面の形状が次のとおりであること。

(一)  全体の輪廓が、徳利ないしビール瓶を思わせる形状であること。

(二)  両側線が、腰部から背当てにかけての部分及び下端に近い部分で僅かに曲線を示すほかは、ほぼ垂直な直線であること。

(三)  背当て部分は富士山状の形状を有し、その上縁の両端から前面上縁にかけて垂直に二本のサスペンダーが取り付けられていること。

(四)  背面膝下部においてゴム紐による絞りがかけられ、その上下にわたつて大きいたてひだが形成されること。

5  左右側面の形状が、次のとおりであること。

(一)  全体の輪廓が、子守りがねんねこで赤子を背負つたような形状であること。

(二)  背当て部を除く両側線の一方(前面の側線)が、上端にごく近い部分で僅かに曲線を示すほかはほぼ垂直な直線であり、また他の一方(背面の側線)は、上端から下端にかけてなだらかな外方への膨らみを見せつつ、膝下部において緩いハート形の凹部を形成する二段曲線であること。

(三)  穿口部と背当て部とによつて形成される側面上縁は、ローマ字のJの横棒を後にずらしたような形状であること。

6  正面中央部の布地のつなぎ目に添つてチヤツクが設けられていること。

7  正面上方部の左右に、口縁をほぼ水平線状に現わした張付けポケツトを付設してあること。

8  全外周面をキルテイングで現わしていること。

七  そこで、以上の事実に基づいて本件登録意匠と被告各製品の意匠とを対比する。

1  被告製品(1)の意匠との対比

両意匠は、(1)両肢を入れるウエスト上部丈の保温着である点、(2)底面の形状がほぼ正方形である点、(3)上縁から深い切込みを形成してフアスナーを装着している点、(4)正面上方部の左右に、口縁を外側方下向きの斜直線状に現わした張付けポケツトを付設している点、(5)全外周面をキルテイングで現わしている点において一致している一方、(6)本件登録意匠では正面、背面、左右側面の各両側線がいずれも外方に向つて緩やかな膨らみを有する曲線を形成し、全体の輪廓が上下の両端の尖鋭部分を切除した紡錘形状であるのに対し、被告製品(1)の意匠では正面及び背面の両側線並びに左右側面の前面の側線が腰部から上端にかけて内方へやや急激にカーブするほかはほぼ垂直な直線を、左右側面の背面の側線が上端から下端へかけて軽く外方へ膨らみを持つ曲線を、それぞれ形成し、全体の輪廓がこけし人形の首部を除いたものをややいびつにした形状である点、(7)本件登録意匠では、穿口部によつて形成される上縁の人体の後部に当る部位が同前部に当る部位より相当高い段差を有する形状であるのに対し、被告製品(1)の意匠では、それは何らの段部もないほぼ水平な一線である点、(8)本件登録意匠では上面穿口部の形状が、絞りの緩い角に丸みのある正方形であるのに対し、被告製品(1)の意匠では、それは強く絞つた形の小さな円形である点、(9)本付登録意匠では正面布地の中央にチヤツクが設けられているのに対し、被告製品(1)の意匠では正面と右側面との間の布地のつなぎ目に添つてそれが設けられている点において相違している。そして、右共通点が、この種の物品としてはごく普通に見られる態様に過ぎないのに対し、右相違点のうち特に(6)(7)の点は、本件登録意匠の要部に関するものであり、その差異は両意匠のもつとも特徴とするところで、看者の目をひきつける相違点であると認められ、これに他の相違点もあいまつて、両意匠を全体的に観察した場合、両意匠は、看者に与える美感を異にするものと認めるのを相当とする、よつて、被告製品(1)の意匠は本件登録意匠に類似しない。

2  被告製品(2)の意匠との対比

両意匠は、前記1(1)、(2)、(3)、(5)と同様の点、及び(10)正面上方に張付けポケツトを付設し、その口縁は外方下向の斜直線状を現わしている点において一致する一方、(11)本件登録意匠では前記1(6)のこの意匠に関する記載部分のとおりの形状であるのに対し、被告製品(2)の意匠では、正面及び背面の両側線が上端及び下端に近い部分で僅かに曲線を示すほかは、ほぼ垂直な直線を形状し、その全体の輪廓が頭陀袋を細長くしたような形状であり、また、左右側面の両側線のうち、前面の側線は、正面及び背面の両側線と同様であり、背面の側線は、上端から下端にかけてなだらかに外方への膨らみを見せつつ、膝下部にゴム紐による絞りがかけられているため、同部において緩いハート形の凹部を形成する二段曲線を示し、その全体の輪廓がローマ字のBをやや崩した形を思わせる形状である点、(12)本件登録意匠では、上面穿口部の形状が絞りの緩い角に丸みのある正方形であるのに対し、被告製品(2)の意匠ではその後半部分を強く絞つた形の小さい半月形である点、(13)正面上方に付設したポケツトは、本件登録意匠では左右に別れているのに対し、被告製品(2)の意匠では中央部に一か所である点、(14)被告製品(2)の意匠では、背面膝下部においてゴム紐による絞りがかけられ、その上下にわたつて大きいたてひだが形成されるのに対し、本件登録意匠では、そのような絞りがなく、従つてたてひだも形成されていないこと、及び前記1(7)、(9)と同様の点において相違している。そして、右共通点が、この種の物品としては、至つて普通に見られる態様に過ぎないのに対し、右相違点のうち、(11)の点及び前記1(7)と同様の点は、両意匠の最も特徴とするところで、看者の注意を強くひく要部と認められ、しかもその差異は視覚的に極めて顕著であつて、看者に別異の印象を与えるに充分なものであり、他の相違点とあいまつて、両意匠を全体的に観察した場合、両意匠は、看者に与える美感を異にするものと認めるのを相当とする。よつて、被告製品(2)の意匠も、本件登録意匠に類似しない。

3  被告製品(3)の意匠との対比

両意匠は、前記1(1)(但し、被告製品(3)の意匠においては、背当て部分を除く主体部との対比)、(2)、(3)、(5)と同様の点、及び(15)張付けポケツトを正面上方部の左右に対称に付設してある点において一致する一方、(16)本件登録意匠では前記1(6)のこの意匠に関する記載部分のとおりの形状であるのに対し、被告製品(3)の意匠では、正面及び背面の両側線が腰部から背当てにかけての部分及び下端に近い部分で僅かに曲線を示すほかは、ほぼ垂直な直線であり、背当て部分は富士山状の形状を有し、その上縁の両端から前面上縁にかけて垂直に二本のサスペンダーが取り付けられており、その全体の輪廓が徳利ないしビール瓶のような形状であり、また、左右側面の背当て部を除く両側線は、前面の側線が上端にごく近い部分で僅かに曲線を示すほかは、ほぼ垂直な直線で、背面の側線が上端から下端にかけてなだらかに外方への膨らみを見せつつ、膝下部にゴム紐による絞りがかけられているため、同部においてゆるいハート形の凹部を形成する二段曲線であり、全体の輪廓が子守りがねんねこで赤子を背負つたような形状である点、(17)本件登録意匠では、前記1(7)のこの意匠に関する記載部分のとおりの形状であるのに対し、被告製品(3)の意匠では穿口部と背当て部とによつて形成される側面上縁はローマ字のJの横棒を後にずらしたような形状である点、(18)上面穿口部の形状が、本件登録意匠では、絞りの緩い角に丸みのある正方形であるのに対し、被告製品(3)の意匠では、その前半部分を強く絞つた形の小さい半月形である点、(19)付設されたポケツトの口縁が、本件登録意匠では外方下向の斜直線状を現わしているのに対し、被告製品(3)の意匠では、それはほぼ水平線状を現わしている点、及び前記2(14)と同様の点において相違している。そして、右共通点が、この種の物品としては至つて普通に見られる態様に過ぎないのに対し、右相違点のうち(16)、(17)の点は、本件登録意匠の要部に関するもので、その差異は、両意匠の最も特徴とするところで、看者の目をひきつける相違点であると認められ、これに他の相違点もあいまつて、両意匠を全体的に観察した場合、両意匠は、看者に与える美感を異にするものと認めるのを相当とする。よつて、被告製品(3)の意匠も、本件登録意匠に類似しない。

4  なお、原告は、本件登録意匠に係る物品と対象物件とが、物品の機能及び用途について全く同一であることを強調して、両意匠が類似である旨主張する。なるほど、意匠は、前記のとおり、物品と不可分の関係にあるから、意匠の類似性の判断においても物品の同一(物品の機能及び用途が同一であること。)ないし類似(用途が同じで機能が異なること。)を当然の前提としているといえる。即ち、非類似物品との間では、意匠の同一ないし類似の問題はそもそも生じない。しかし、物品の同一性ないし類似性が認められることによつて直ちに意匠が同一または類似しているとまではいえないのであり、意匠の同一ないし類似の判断は、右のことを前提としつつ、物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合が同一ないし類似しているかどうかについて、改めて判断する必要があるのであるから、原告の右主張は、当を得ないものである。

八  本件類似意匠について

1  検甲第二号証、いずれも成立に争いのない甲第一八号証、第二八号証の一ないし四、本件意匠権の類似意匠登録第一号の写真であることに争いのない甲第一九号証、原告本人尋問の結果によれば、原告は、昭和四三年一〇月、店頭で、被告製品(1)を買い求め、右製品について昭和四四年二月一三日、出願番号昭四四―四二〇四号をもつて、類似意匠登録出願をし、本件類似意匠は、昭和五一年二月二五日、本件意匠権の類似意匠登録第一号として登録されたこと(右出願日、出願番号をもつて、類似意匠の登録出願をなしたこと及びその出願の類似意匠が右日時に登録されたことは当事者間に争いがない。)、本件類似意匠の図面代用写真は、正面図、背面図、左右側面図を撮影するたびに、保温着を扁平にして撮影していること、即ち、六面図を同一の状態では撮影していないことが認められる。これによれば、本件類似意匠の図面代用写真は、被告製品(1)を正当な正投象図法に則り撮影したものではなく、従つてそれは被告製品(1)の意匠を現わしているとはいえないから、原告が検甲第二号証に相当する商品の意匠によつて本件類似意匠の登録を受けたからといつて、被告製品(1)の意匠が本件登録意匠に類似しているとはいえない。

2  ところで、類似意匠が登録されると、その類似意匠の意匠権は本意匠の意匠権と合体する(法二二条)。しかし、類似意匠制度は、登録意匠の類似範囲を明確にするため、登録意匠に類似する意匠を登録することにより、当該意匠権の及ぶ範囲を明確にしようとするものであると解せられるから、右合体は、本意匠権の権利範囲を確認する意味をもつに過ぎず、これにより、本意匠の類似の範囲が拡げられたと解するのは相当でない。とすれば、被告各製品の意匠が本件登録意匠に類似していない以上、本件類似意匠と更に対比する必要はないというべきである。

九  以上のとおり、被告製品(1)、(2)、(3)の各意匠は、本件登録意匠に類似しているとは認められないから、その余の点について判断するまでもなく原告の本訴請求は理由がない。そこで、これを失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 宮本増 森本翅充 彦坂孝孔)

第一目録

後掲の写真に示す如き次の形状を有するキルテイング製電気足温器。

1 底面の形状が、ほぼ正方形である。

2 上面穿口部の形状が、強くしぼつた形の小さい円形である。

3 正面及び背面の形状が、次の如くである。

(1) 全体の輪廓が、こけし人形の首部を除いたものを思わせる形状である。

(2) 高さ(上端から下端までの径)と横幅の最大径との比が約三対一である。

(3) 両側線が、腰部(着用したとき人体の腰に当たる部分)から上端にかけて内方へやや急激にカーブし、また膝下部(着用したとき人体の膝下にあたる部分)において僅かに凹部を形成する点を除いて、ほぼ垂直な直線である。

4 左右側面の形状が、次の如くである。

(1) 全体の輪廓が、こけし人形の首部を除いたものをややいびつにした形状である。

(2) 両側線の一方(前面の側線)が腰部から上端にかけてやや急激にカーブするほかは、ほぼ垂直な直線であるのに対し、他の一方(背面の側線)は、上端から下端へかけて軽く外方へのふくらみをもつ曲線である。

(3) 穿口部によつて形成される上縁は、何らの段部もない、ほぼ水平な一線である。

5 正面と右側面との間の布地のつなぎ目に添つて、チヤツクがもうけられている。

以上

図〈省略〉

第二目録

後掲の写真に示す如き、次の形状を有するキルテイング製電気足温器。

1 底面の形状が、ほぼ正方形である。

2 上面穿口部の形状が、その後半部分を強くしぼつた形の小さい半月形である。

3 上面及び背面の形状が、次の如くである。

(1) 全体の輪廓が、頭陀袋を細長くしたような形状である。

(2) 高さ(上端から下端までの径)と横幅の最大径との比が、約二・五対一である。

(3) 両側線が、上端及び下端に近い部分において僅かに曲線を示すほかは、ほぼ垂直な直線である。

(4) 背面膝下部においてゴム紐によるしぼりがかけられ、その上下にわたつて大きいたてひだが形成される。

4 左右側面の形状が、次の如くである。

(1) 全体の輪廓が、ローマ字のBをやや崩した形を思わせる形状である。

(2) 両側線の一方(前面の側線)が、その上端及び下端に近い部分においてごく僅かに曲線を示すほかは、ほぼ垂直な直線であるのに対し、他の一方(背面の側線)は、上端から下端にかけてなだらかに外方へのふくらみを見せつつ、膝下部においてゆるいハート形の凹部を形成する二段曲線である。

(3) 穿口部によつて形成される上縁は、何らの段部もない、ほぼ水平な一線である。

5 正面と右側面との間の布地のつなぎ目に添つて、チヤツクが設けられている。

以上

図〈省略〉

第三目録

後掲の写真に示す如き、次の形状を有するキルテイング製電気足温器。

1 底面の形状が、ほぼ正方形である。

2 上面穿口部の形状が、その前半部分を強くしぼつた形の小さい半月形である。

3 正面及び背面の形状が、次の如くである。

(1) 全体の輪廓が、徳利ないしビール瓶を思わせる形状である。

(2) 高さ(背あての上端から下端までの径)と横幅の最大径との比が、約二・三対一である。

(3) 両側線が、腰部から背あてにかけての部分及び下端に近い部分で僅かに曲線を示すほかは、ほぼ垂直な直線である。

(4) 背あて部分は富士山状の形状を有し、その上縁の両端から前面上縁にかけて垂直に二本のサンペンダーが取り付けられている。

(5) 背面膝下部においてゴム紐によるしぼりがかけられ、その上下にわたつて大きいたてひだが形成される。

4 左右側面の形状が、次の如くである。

(1) 全体の輪廓が、子守りがねんねこで赤子を背負つたような形状である。

(2) 背あて部を除く両側線の一方(前面の側線)が、上端にごく近い部分で僅かに曲線を示すほかはほぼ垂直な直線であり、また他の一方(背面の側線)は、上端から下端にかけてなだらかな外方へのふくらみを見せつつ、膝下部においてゆるいハート形の凹部を形成する二段曲線である。

(3) 穿口部と背あて部とによつて形成される側面上縁は、ローマ字のJの横棒を後にずらしたような形状である。

5 正面中央の布地のつなぎ目に添つてチヤツクが設けられている。

以上

図〈省略〉

意匠公報

出願 昭四〇・六・二六

意願 昭四〇―一七五九九

登録 昭四二・三・一八

意匠権者(創作者) 朝倉勝一 名古屋市東区山口町一三

代理人 弁理士 竹下傅吉

意匠に係る物品 保温着

説明 右側面図は左側面図と対称にあらわれる。

図〈省略〉

実用新案公報

昭三八―一三一三一

公告 昭三八・六・二九

出願 昭三六・六・二二

実願 昭三六―三一九八七

出願人 考案者 石立清 徳島市北島田町一の一一一

(出願人において、権利譲渡または実施許諾の用意がある)

椅子掛用脚部保温袋

図面の簡単な説明

第1図は本考案の正面図、第2図は本考案の背面図、第3図は本考案の底面図。

考案の詳細な説明

この実用新案は冬期に用いるもので、椅子掛けの際に下半身が暖まるようにした布製の袋、図中1は下半身全部を入れる布製の袋状のもの、2は下半身の入れ出しを容易にするためのチヤツクでの開閉部分、3はチヤツクの開閉でこたつの出し入れができるようにしたところ、4はこたつを安定させるため板を入れこんだ底の部分、5は腰の部分をしめる紐、6は換気孔を兼ねた手を入れるところ。

実用新案登録請求の範囲

図に示すように布製袋状のもので、その中に下半身を入れることができ、下部の横からこたつも入れることができるようにした椅子掛用の保温袋の形状。

勉強用足温器生産実績表(年度別・形式別)

株式会社日立製作所

形式

年度(昭和)

SC―310

SC―311

SC―312

43

9,949

1,000

44

21,977

45

20,000

46

25,090

47

10,000

9,949台

68,067台

10,000台

合計 88,016台

以上

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